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東京高等裁判所 昭和47年(ラ)685号 決定 1972年11月17日

抗告人

秋津産業株式会社

右代表者

上村信之

右代理人

中井秀之

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人は、「原決定を取り消す。東京地方裁判所昭和四七年(リ)第九〇号事件につき、昭和四七年三月三一日付支払委託処分を取り消し、抗告人、三協工業株式会社間における同事件の配当を続行する。」旨の裁判を求め、抗告の理由は、別紙記載のとおりである。

そこで考えるに、民事訴訟法第五四四条第一項の強制執行の方法に関する異議は、利害関係人の申立てにより、現に進行中の違法な強制執行手続を是正し、執行手続を適正に進行させるための規定であつて、執行手続が終了した後において、過去に遡つて、違法な執行があるとして、その効果を除去することを目的とする制度ではないところ、本件記録によれば、抗告人を債権者とする債権差押(東京地方裁判所昭和四七年(ル)第八四五号事件)と申立外三協工業株式会社を債権者とする仮差押(同裁判所昭和四七年(ヨ)第七三二号事件)との競合が生じ、抗告人は、昭和四七年三月二一日、第三債務者から取り立てた金員を民事訴訟法第六二一条に準じて、東京法務局に供託し、かつ執行裁判所である東京地方裁判所に、その旨事情届をしたこと、同年同日三一日前記債権差押事件の被差押債権者である共栄産業株式会社が破産宣告を受け、同会社の破産管財人である菅野谷信宏から、前記供託金の交付の請求を受けたので、同裁判所が、即日、右破産管財人に右供託金を交付したこと、が明らかである。そうすれば、本件執行手続は、昭和四七年三月三一日右供託金が破産管財人に交付されたことにより終了したものと言わなければならないところ、抗告人は原審に対し昭和四七年四月七日執行方法に関する異議の申立てをなしたことは記載上明らかであるから、たとい執行手続に違法があるとしても、もはや執行方法に関する異議によつては、右手続の是正を求めることはできないものといわなければならない。したがつて、本件抗告の理由は、採用するに由なきものである。

よつて、主文のとおり決定する。

(位野木益雄 鰍沢健三 鈴木重信)

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